（口語新仮名）：
「ＣＭを飛ばす操作をしようとしてああこれは録画ではないと気が付く」（梧桐）

「日の出近く東方の雲は下辺（したべ）焼け西なる雲は上辺（うはべ）焼けゐる」（梧桐）

「台風の過ぎたるあとの蒼空に雲の団子がいくつも浮かぶ」（梧桐）

「人間の歴史は戦争の歴史とも。世界人口はなほ増え続く」（梧桐）

「国ごとのエゴのみならず地球に住む七十億人とふ視点が大事」（梧桐）

「紺青の空の深部を凝視（みつ）めて佇つ 己が魂の映りをらんか」（梧桐）

「廃材など置かれし場所に繁茂する紫式部が多（さは）に実を着く」（梧桐）

「強風の暴るる音を余所（よそ）にして無風の部屋に惰眠をむさぼる」（梧桐）

「この国の嵐の予兆か雨つよし妻と期日前投票に行く」（梧桐）

「原爆は強力な爆弾に過ぎざると言ふ米人の多きを憂ふ」（梧桐）

「日本が自殺率の高いこと世界に知られる。韓国に次いで」（梧桐）（新仮名）

「火星、木星、土星の位置さへ生命の誕生・進化・持続に寄与すと」（梧桐）

「常に‘敵’を創り軍拡を図らんの軍産の論理は‘平和’を排除す」（梧桐）

「仏教に言ふ‘無’は無ならで全てを生む　現代物理の‘真空’のやうに」（梧桐）

「くさぐさの思考まとまらずうるさくも時報鳴りひびき焦燥うづく」（梧桐）

三岸節子記念美術館にて：
「力強きタッチの奥より泌み出づる悲しみの質を節子は知りゐき」（梧桐）

「たまさかに路面に育ちほそぼそと咲く小花こそ泣かまほしけれ」（梧桐）

「此の身成す無数の微粒子も天空の星屑と同質　端的に言へば」（梧桐）

「たまさかに無数の微粒子が集積しやがて離散して果つるのみ　我も」（梧桐）

「また起こりし銃の乱射はラスヴェガス こたびはまさかのマッサカ（massacre）にして」（梧桐）

massacre（無差別大量殺戮）

「雨降りて狭庭はかなり冷えゐるらし今夜は虫の音とんと聞こえぬ」（梧桐）