「一年をただ一枚に収めたるカレンダーが必需　‘時’の迅さに」（梧桐）

（梧桐）：

「アメリカの元大統領が老いて言ふ heaven は存在し afterlife をただに信ずと」

（heaven：天国。afterlife：来世。）

「ことごとく断雲の縁を朱に染めて日が昇りくるこの静けさや」（梧桐）

「パトカーがサイレン鳴らして走りゆく自らが事件そのもののごと」（梧桐）

「驚きは哺乳によりて子育てなす蜘蛛居るといふ 生物無限」（梧桐）

「この体 分子原子に分解後再集合して何になるらん」（梧桐）

「わが体いづれ微粒子に分解しほかと混淆して何に再生するや」（梧桐）

（口語新仮名）：

「まどろみや サラ・ブライトマンの歌声に透き通った水中を泳いでいた」（梧桐）

「<歴代の総理の通信簿> とふ本ありて政治の亡霊を見る思ひに開く」（梧桐）

「鬱あれば満月を宇宙の穴と詠む 皓皓として無数の夢の死」（梧桐）

「薄いうすい真綿のやうな白雲が大空を刷き地球をつつむ」（梧桐）

「骨と皮のみなる難民の幼児らよ 大人らはいつたい何をしてをるのか」（梧桐）

「ＡＴＭに暗証番号を打ち込むに周囲を警戒 預金は僅かなれど」（梧桐）

「アメリカの日本人教授が敗戦後の日本を米国植民地と呼ぶ」（梧桐）

「文化的歴史の長き日本が「文明開化」とは笑止千万」（梧桐）

「野蛮なる軍備の多寡にてその国の偉（えら）さを量るは愚の骨頂なり」（梧桐）

「学会誌の年年薄くなりゆきて学会消滅の危ふさ思はる」（梧桐）

「武力強大ゆゑに戦争犯罪を犯しても罰せられぬ国あるが不愉快」（梧桐）

「国の将来憂ふべきなり非正規の労働者が年年増加してゐて」（梧桐）

「新卒者の非正規社員が増えてゐてアンダークラスとふ階級つくる」（梧桐）

「日の没（い）りて山の稜線を際立たせ余情の茜が戦火のごとし」（梧桐）

「間近にてジェット音が低く唸り止まず晩秋曇天の午後を不穏にす」（梧桐）

「この女優べつのドラマでも吹き替へは同じ声優なり 韓流氾濫」（梧桐）